閉経で減った女性ホルモンの「骨を守る働き」だけを、肩代わりしてくれるお薬があります。「ホルモン剤はちょっと不安」という方に知ってほしいお話です。
骨密度の結果を前に、50代の方からこんな質問を受けました。
「骨が弱くなったのは、女性ホルモンが減ったせいなんですよね。だったら、ホルモンを足せばいいんじゃ……あ、でも、ホルモン剤ってなんだか怖くて」
その発想も、ためらいも、もっともです。SERM(サーム)と呼ばれる仲間のお薬は、その両方に応えてくれます。女性ホルモンそのものではないのに、骨の上でだけ女性ホルモンに似た働きをするからです。
からだ中の扉を開けるのではなく、「骨の扉」だけを開ける合鍵のようなお薬です。
「骨にだけ効く」ように設計された合鍵
女性ホルモンは、骨のほかに乳房や子宮にも働きかけます。SERMは、たとえるなら骨の鍵穴にだけ合うように作られた合鍵。骨では守り役として働き、乳房や子宮ではホルモンのようには働かないように設計されています。
1日1回の飲み薬で、朝いちばんや空腹といった時間のルールはありません。閉経からそれほど年数が経っていない方の最初の治療として、よく選ばれます。
血栓(血のかたまり)についての注意点と、どんな方に向いているかは、次の記事にくわしく書きました。
更年期の「ホルモン補充療法」とは別のもの
よく混同されますが、ほてりや発汗などの更年期症状に使うホルモン補充療法(HRT)と、SERMは別のものです。SERMは更年期症状を和らげるお薬ではありません。逆に、更年期症状の治療が骨にも良い影響を持つ場合はあります。
骨を守る方法はいくつもあって、年齢や体の状態に合わせて主治医と選べます。
どちらの話なのか迷ったら、遠慮なく「それはホルモンそのものですか?」と聞いてください。
今日できること
今日は、この名前だけ覚えて帰ってください。
「SERM(サーム):骨の上でだけ、女性ホルモンに似た働きをするお薬」
気になったら、次の診察で「私にはSERMという選択肢はありますか」と聞いてみてください。次回は「そのサプリ、お薬と重なっていませんか?」というお話です。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医/東海大学医学部 医学教育学 教授)