「女性ホルモンが減ると骨が弱くなる。それなら、ホルモンに似た働きで骨を守れないだろうか」——そんな発想から生まれたのが、SERM(サーム/選択的エストロゲン受容体モジュレーター)というお薬です。1日1回の飲み薬で、飲む時間の細かい決まりがなく、閉経後の女性の骨を守る選択肢として広く使われています。この記事では、SERMがどんなお薬か、どんな方に向いていて、どんなことに気をつければよいか、わかりやすくお伝えします。
閉経後の骨を、女性ホルモンに似た働きで守るSERM。1日1回の飲みやすいお薬の特徴と、血栓への大切な注意点を解説します。
「女性ホルモンが減ると骨が弱くなる。それなら、ホルモンに似た働きで骨を守れないだろうか」——そんな発想から生まれたのが、SERM(サーム/選択的エストロゲン受容体モジュレーター)というお薬です。1日1回の飲み薬で、飲む時間の細かい決まりがなく、閉経後の女性の骨を守る選択肢として広く使われています。この記事では、SERMがどんなお薬か、どんな方に向いていて、どんなことに気をつければよいか、わかりやすくお伝えします。
女性ホルモン(エストロゲン)は、骨が壊されすぎないよう見張る「骨の守り役」でもあります。閉経でエストロゲンが減ると、この守りが手薄になり、骨が壊されるスピードが速まってしまいます。
SERMは、骨においてはエストロゲンと似た働きをして、骨が壊されるのをおさえるお薬です。
ここで大切なのが「選択的」という言葉です。エストロゲンは骨だけでなく、乳房や子宮にも作用します。SERMは、いわば「骨の鍵穴にだけ合うように調整された合鍵」。骨では守り役として働く一方、乳房や子宮ではエストロゲンのようには働かない設計になっています。
家にたとえるなら、家中の部屋を開けられるマスターキーではなく、「骨の部屋」だけを開ける専用の鍵を使うイメージです。
日本で骨粗鬆症の治療に使われているSERMは、主に次の2つです。
| 一般名 | 主な商品名 | 飲み方 |
|---|---|---|
| ラロキシフェン | エビスタ | 1日1回1錠 |
| バゼドキシフェン | ビビアント | 1日1回1錠 |
どちらも1日1回、時間を選ばず飲める錠剤です。食事の影響を受けにくく、朝でも夜でもかまいません。ビスフォスフォネートのような「朝いちばん・お水で・30分横にならない」といった細かいルールがないのは、続けやすさの面で大きな特徴です。
2025年ガイドラインでも、SERMは椎体骨折の予防に関するエビデンスが評価されています。
どのお薬から始めるかは、骨密度・骨折歴・年齢・他の病気などをもとに、主治医が総合的に判断します。
SERMでもっとも注意したいのは、静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)——足の深い静脈などに血のかたまりができ、それが肺に飛ぶことがある病気です。頻度は高くありませんが、エストロゲンに似た働きを持つお薬に共通するリスクです。
SERMは、閉経後それほど年数が経っていない、骨折リスクが中等度の女性で選ばれることの多いお薬です。たとえば「骨密度が下がってきたが、まだ骨折はしていない」「これから長く骨を守る治療を始めたい」という場面です。
一方、すでに骨折を繰り返している方や骨密度が大きく低下している方には、より強力に骨密度を上げるお薬(注射のお薬や骨をつくるお薬)が優先されることがあります。
📖 治療全体の中での位置づけは、骨粗鬆症の治療 — お薬の種類と選び方もあわせてご覧ください。
診察のときに、こんなふうに聞いてみましょう。
[!warning] お願い 現在処方されているお薬を、自己判断で変えたりやめたりしないでください。気になることがあれば、必ず主治医にご相談ください。
Q. SERMはホルモン補充療法(HRT)と同じですか?
いいえ、別のものです。HRTはエストロゲンそのものを補う治療で、ほてりなどの更年期症状に効果があります。SERMはエストロゲンではなく、骨で似た働きをするお薬で、更年期症状には効果がなく、むしろほてりが出ることがあります。目的に応じて使い分けられます。
Q. 乳がんのリスクが下がると聞きましたが、本当ですか?
海外の大規模な研究で、ラロキシフェンを使用した方に浸潤性乳がんの発生が少なかったという報告があります。ただし、日本では乳がん予防を目的とした使用は承認されていません。骨粗鬆症の治療薬として使うなかで知られている知見、と理解してください。
Q. 何年くらい続けられるお薬ですか?
比較的長く続けやすいお薬とされており、数年単位で使用した臨床試験のデータがあります。実際の期間は骨密度の推移などを見ながら主治医が判断します。
Q. 飛行機での旅行は大丈夫ですか?
通常の旅行は問題ありませんが、長時間座ったままでいると血栓のリスクが高まります。機内ではこまめに足首を動かす・水分をとる・ときどき立ち上がるなどを心がけてください。心配な場合は事前に主治医にご相談を。
Q. ジェネリック医薬品はありますか?
ラロキシフェンにはジェネリック医薬品があります。費用が気になる方は、主治医や薬剤師に相談してみてください。
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。骨の健康について気になることがあれば、主治医にご相談ください。
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医療監修
加藤裕幸(整形外科医・医籍登録 409723号)
東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院
最終更新:2026年7月10日
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