「自分で注射するなんて、とても無理」——そう思うのは、ごく当たり前のことです。でも、最初は同じ気持ちだった多くの方が、今はご自身のペースで続けています。
骨をつくるお薬の中には、ご自身で注射する「自己注射」のものがあります。これをお伝えすると、たいていの方の表情がこわばります。
「先生、私には……自分で注射なんて、できる気がしません」
手が震える、想像しただけでこわい。その気持ち、痛いほどわかります。注射は看護師さんにしてもらうもの——そう思って何十年も過ごしてきたのですから、こわくて当然です。こわいと感じるのは、弱さでも、おかしなことでもありません。
最初は誰でも不安です。看護師さんと一緒に、何度でも練習できます。
針は、髪の毛ほどの細さ
まず、こわさの正体をひとつ、小さくしておきましょう。
自己注射に使う針は、採血や予防接種の針とはまったく別物です。髪の毛ほどの細さで、刺すのも皮膚のすぐ下だけ。「チクッ」とする程度で、採血よりずっと軽い、とおっしゃる方がほとんどです。
そして、針を見なくてもいいように工夫されたタイプや、ボタンを押すだけで終わるタイプもあります。最初の数回は、看護師さんが必ず一緒にやってくれます。一人でできるようになるまで、何度でも練習して大丈夫。針の細さやデバイスの違い、手順は、記事でくわしくご紹介しています。
「最初の5回」を、一緒に
外来で見ていると、多くの方が最初の5回ほどを越えると、ふっと楽になります。「こんなものだったのね」「歯磨きと同じになりました」と。だから、最初だけ、肩の力を抜いて。
深呼吸を3回。決まった時間に。ご家族にそばにいてもらう。そして何より——できたら、自分をほめてください。「今日もできた」と。骨のために一歩踏み出しているあなたは、本当にすごいのです。
「やらなきゃ」ではなく、「いま、骨に栄養を届けている」。そう思えると、注射の意味が少し変わります。
どうしても難しければ、通院して打ってもらう方法もあります。「できなければいけない」ことはありません。大切なのは、無理なく治療を続けられることです。
今日できること
今日は、これだけで十分です。
次の診察で、「注射がこわいんです」と、正直に伝えてみる。
その一言から、看護師さんや主治医が、あなたのペースに寄り添ってくれます。次回は、お薬の「副作用が心配」という不安について、正しく知って怖さをほどくお話をします。
この連載は一般的な情報提供を目的としたものです。診断や治療については、必ず主治医にご相談ください。
監修:加藤裕幸(整形外科専門医/東海大学医学部 医学教育学 教授)