骨粗鬆症と歯科治療 — 安心して歯の治療を受けるために|骨活ガイド
🦷safety

骨粗鬆症と歯科治療 — 安心して歯の治療を受けるために

骨粗鬆症のお薬を使いながら歯科治療を受けるための実践ガイド。休薬の最新見解、歯科医への伝え方、断られた場合の対処法を解説します。

「骨粗鬆症のお薬を飲んでいると、歯を抜けないの?」「歯医者さんに断られてしまった…」——こうした不安を抱えている方はとても多いです。

結論からお伝えすると、ほとんどの方は、骨粗鬆症の治療中でも安全に歯科治療を受けることができます。ただし、歯科医と主治医(整形外科医や内科医)の連携が大切です。この記事では、安心して歯の治療を受けるために知っておきたいことをまとめました。

この動画はAI音声技術(Google NotebookLM)を使用して作成されています。内容は整形外科専門医が監修しています。

1

このページでわかること

  • 骨粗鬆症のお薬と歯科治療の関係がわかります
  • 「薬を休む必要があるか」の最新の考え方がわかります
  • 歯科を受診するときの伝え方のコツがわかります
  • 歯医者さんに断られた場合の対処法がわかります
  • 日頃のお口のケアで、将来の不安を減らせることがわかります

2

なぜ「歯科治療が心配」と言われるの?

骨粗鬆症の治療で使われるお薬のうち、骨吸収抑制薬(ビスフォスフォネートやデノスマブ)には、ごくまれに「顎骨壊死(がっこつえし)」という副作用が報告されています。

顎骨壊死とは、あごの骨の一部が露出して治りにくくなる状態のことです。とくに抜歯(歯を抜くこと)をきっかけに起きやすいと報告されていることから、「骨のお薬を飲んでいると歯の治療ができない」という誤解が広まってしまいました。

実際のリスクはどのくらい?

骨粗鬆症の治療量(通常量)での発生頻度は、10万人に数人〜十数人程度です。

つまり、99.99%以上の方には起きない副作用です。一方、骨粗鬆症を治療しないで骨折するリスクのほうが、はるかに高いのです。

詳しくは「顎骨壊死と非定型骨折」の記事で解説しています


3

「薬を休むべきか」——2023年の最新見解

以前は「抜歯の前にお薬を休む(休薬する)」ことが広く行われていました。しかし、最新の研究でわかってきたのは:

顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー(2023年)の要点

  1. 経口ビスフォスフォネート(飲み薬):通常量で使用している場合、抜歯時の休薬は原則として不要
  2. デノスマブ(プラリア):抜歯のタイミングを注射の時期と調整することが望ましい(次回注射まで余裕のある時期が理想)
  3. 休薬による骨折リスク上昇のほうが、休薬で顎骨壊死を予防する効果よりも問題になることがある

[!note] これはあくまで一般的な指針です。最終的な判断は、歯科医と主治医が患者さん個人のリスクを評価して決めます。自己判断でお薬をやめることは絶対に避けてください。


4

歯科を受診するとき——伝え方のコツ

歯科治療をスムーズに受けるために、以下の情報を歯科医に伝えましょう。

伝えるべき4つのこと

  1. お薬の名前(プラリア、ボナロン、フォサマック、リカルボン、ベネットなど)
  2. お薬を使っている期間(「○年くらい飲んでいます」)
  3. 注射薬の場合、最後に打った日(プラリアなら半年に1回の日付)
  4. 主治医の名前と連絡先(紹介状やお薬手帳があるとベスト)

お薬手帳を必ず持参しましょう

お薬手帳は歯科医にとって最も重要な情報源です。お薬手帳を見せるだけで、多くの情報が正確に伝わります。

「骨のお薬を飲んでいます」の一言から

最初に一言伝えるだけで、歯科医は適切な治療計画を立てることができます。隠したり、面倒に思ったりせず、受付の段階で伝えましょう。

お薬手帳を見せて歯科医に相談する場面


5

歯科治療の種類別——どこまでできる?

骨粗鬆症のお薬を使用中でも、多くの歯科治療は通常通り受けられます。

通常通り受けられる治療

  • 定期検診・クリーニング——まったく問題ありません
  • 虫歯の治療(詰め物・被せ物)——通常通りです
  • 歯周病の治療(歯石除去など)——むしろ積極的に受けましょう
  • 入れ歯の調整——問題ありません
  • 根管治療(歯の神経の治療)——通常通り可能です

歯科医と主治医の相談が必要な治療

  • 抜歯——多くの場合は可能ですが、リスク評価と連携が必要です
  • インプラント手術——慎重な判断が必要です。必ず主治医に相談してください
  • 歯周外科手術——骨を触る処置は個別に判断します
  • 顎の手術——主治医との十分な連携が必須です

ポイント:「骨を直接触る処置」かどうかで判断が分かれます。通常の虫歯治療やクリーニングは心配いりません。


6

歯医者さんに断られたら——あきらめないで

残念ながら、「骨粗鬆症のお薬を飲んでいるから治療できません」と断られてしまう方もいらっしゃいます。これは歯科医が慎重になっているためですが、必ずしも治療が本当にできないわけではありません。

断られたときの3つの対処法

1. 主治医に相談する

整形外科や内科の主治医に「歯科で断られた」ことを伝えましょう。主治医から歯科医への情報提供書(お手紙)を書いてもらえることがあります。

2. 口腔外科のある病院を受診する

大学病院や総合病院の口腔外科は、骨粗鬆症患者さんの歯科治療に慣れています。かかりつけ歯科医から紹介状を書いてもらいましょう。

3. 主治医と歯科医の連携を促す

「先生同士でご相談いただけますか?」とお願いすることも有効です。多くの場合、お薬の情報と治療方針を共有することで解決します。

絶対にやってはいけないこと

  • 歯科治療のために自己判断でお薬を中止する
  • お薬を使っていることを歯科医に隠す
  • 歯の問題を放置する(むしろ歯周病の悪化が顎骨壊死のリスクを高めます)

7

デノスマブ(プラリア)を使っている方へ

デノスマブは6ヶ月に1回の注射ですので、抜歯などの侵襲的な歯科治療を受ける場合、注射のタイミングを考慮することが推奨されています。

理想的なタイミング

プラリア注射 ─────── 抜歯に最適な時期 ─────── 次回注射
(0ヶ月目)        (注射後2〜3ヶ月が理想的)    (6ヶ月目)
  • 注射の直後よりも、注射後しばらく経って薬の血中濃度がやや下がった時期が望ましいとされています
  • ただし、緊急の歯科処置(強い痛みや感染など)はタイミングに関係なく優先されます

この調整はあくまで「望ましい」レベルです。必要な歯科治療を延期しすぎることのデメリットのほうが大きい場合もあります。主治医と歯科医にご相談ください。


8

お口のケアが最大の予防——今日からできること

顎骨壊死のリスクを減らすためにもっとも効果的なのは、日頃のお口のケアです。歯と歯ぐきを健康に保つことで、将来「抜歯が必要になる状況」そのものを減らすことができます。

毎日のケア

  • 1日2回以上の丁寧なブラッシング(とくに歯と歯ぐきの境目)
  • 歯間ブラシやフロスの使用(歯と歯の間の汚れは歯ブラシだけでは取れません)
  • 入れ歯は毎晩外して清潔にする
  • 口の中を乾燥させない(お水をこまめに飲む)

定期検診

  • 年に2〜3回は歯科検診を受けましょう
  • 「骨粗鬆症のお薬を使っています」と毎回伝えてください
  • 早期に問題を見つけることで、抜歯を避けられることが多いです

入れ歯の方へ

  • 合わない入れ歯は歯ぐきを傷つけます — 違和感があれば調整してもらいましょう
  • 入れ歯の下の歯ぐきの傷は顎骨壊死のきっかけになることがあります
  • 定期的な入れ歯の調整は、リスク軽減につながります

日頃のお口のケアで骨と歯を守る


9

よくある質問

Q. ビスフォスフォネートを何年も飲んでいます。歯科治療は一切受けられないのですか?

いいえ、ほとんどの歯科治療は通常通り受けられます。定期検診やクリーニング、虫歯の治療は何も心配いりません。抜歯や骨に触る手術の場合のみ、歯科医と主治医の連携が必要になります。

Q. 歯科医に「薬を3ヶ月休んでから来てください」と言われました。休薬すべきですか?

自己判断でお薬を休めないでください。まず主治医(骨粗鬆症の担当医)に相談してください。2023年のポジションペーパーでは、通常量の経口ビスフォスフォネートでの休薬は原則不要とされています。主治医が歯科医に情報提供することで、休薬なしで治療を進められることが多いです。

Q. デノスマブ(プラリア)を打っている間は歯を抜けませんか?

抜歯は可能ですが、タイミングの調整が望ましいとされています。次回注射まで時間の余裕がある時期(注射後2〜3ヶ月目あたり)が理想的です。緊急の場合はタイミングに関わらず治療が優先されます。歯科医と主治医にご相談ください。

Q. インプラントは絶対にできないのですか?

「絶対にできない」わけではありませんが、慎重な判断が必要です。使用しているお薬の種類や期間、全身状態などを総合的に評価して、歯科医と主治医が相談して決めます。大学病院の口腔外科への紹介が適切な場合もあります。

Q. これからお薬を始めるのですが、先に歯科検診を受けたほうがよいですか?

はい、できれば先に歯科検診を受けることをお勧めします。治療が必要な虫歯や歯周病があれば、お薬を始める前に治療しておくのが理想的です。主治医にも「歯科検診を先に受けてよいですか」と確認してみてください。

Q. ロモソズマブ(イベニティ)の場合はどうですか?

ロモソズマブも骨吸収抑制作用を持つお薬ですので、抜歯の際には同様の配慮が必要です。12ヶ月間の限定使用であることから、可能であれば投与期間中の侵襲的な歯科処置は避け、終了後に行うことが理想的です。ただし、緊急の場合は治療を優先します。


10

今日からできること

  1. お薬手帳を歯科受診時にも必ず持参する
  2. 「骨のお薬を飲んでいます」と歯科の受付で伝える
  3. 毎日のブラッシングを丁寧にする(歯と歯ぐきの境目を意識)
  4. 年2〜3回の歯科定期検診を習慣にする
  5. 歯科で断られたら、主治医に相談する(あきらめない)

覚えておいてください: 骨粗鬆症のお薬と歯科治療は、ほとんどの方にとって両立できます。大切なのは、歯科医と主治医の情報共有です。


11

参考文献

  • 顎骨壊死検討委員会. 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
  • 日本骨粗鬆症学会ほか. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版
  • 米田俊之ほか. 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)—最新の知見と臨床での対応. 日本歯科医師会雑誌 2024

本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。歯科治療についてご不安な点は、歯科医と骨粗鬆症の主治医にご相談ください。

利益相反の開示

本記事の内容は特定の製品や企業から独立しています。薬剤名は一般名または広く知られた商品名を情報提供の目的で記載しており、特定の製品を推奨するものではありません。当サイトのスポンサーシップについては編集方針をご覧ください。

医療監修

加藤裕幸整形外科医・医籍登録 409723号

東海大学医学部付属病院/湘陽かしわ台病院

最終更新:2026年5月17日

利益相反の開示

本サイトは○○○○の協賛を受けています。記事の内容は監修医の医学的判断に基づいており、協賛企業が編集内容に関与することはありません。